2007年05月22日
腹八分目だの、引き際だのという言葉があるが、なんでもやり過ぎはよくない。
例えばタクシー。こちとら道の名前など知らないのに、やれ「246で?」だの、やれ「山手通りですかねぇ」だのと言って来る。なんでも都内の地理に詳しい人に「あっちの方が早いぞ。遠回りか!」などと言われないため、客に好きな道を選んで貰う「よかれと思ってサービス」なんだそうだが、それはハナからプロとしての誇りを捨ててはいないだろうか。プロとして、最も早いルートを導き出し、それを信じて進むべきではなかろうか。万が一客に揚げ足をとられたら謝ればいい。飯を食いに行って、味付けや盛り方、料理を出すタイミングをいちいち聞かれたら「あーもういいよ!ウチ帰ってどん兵衛食うよ!」って言いたくもなる。自らのプライドをかけて作り出した料理を「お口にあえば…」と少し謙遜しながら客に出し、マズイと言われたら申し訳ございませんと謝る。これが美しい関係だ。サービスし過ぎは、煩わしさという危険もはらんでいる。
逆もある。乗るなり「この辺知らないんで道教えてくれますか?」とカミングアウトしてくる運転手がいる。目の前には最新鋭であろうナビシステムがあるのに、だ。驚愕する。助けを求めたヒーローに「悪ぃ、武器ってどうやったら出るか分かる?つか、今日暑くね?」とか言われた気分だ。百歩譲って、その車が大都会東京ラビリンスに迷い込んだ姫君だとする。まぁ運転手はおっさんな訳だが、あえてそう考えよう。だとしてもなぜ客である私が、自分よりこの道に詳しい人間だと思うのだ。さらに言えば、なぜ目の前のナビシステムを、ただのカラフルな「今僕ここにいますよメカ」に成り下げる?何のための二種免許試験なのだ。怠惰にもほどがある。
少し言い過ぎた。言い過ぎはよくない。日々多くのストレスに悩まされる現代社会。「いい塩梅であること」が大切だ。濃すぎず薄すぎず、毎日でも飽きない丁度よさ。今日の一枚は、毒と威厳、笑いと教養、器用さとくだらなさがいい塩梅の「お昼の顔」。毎日着るTシャツとしても、いい塩梅ではないだろうか。
知り合った人からもお友達を紹介してもらえるかも知れないね。そうですね。
浅沼晋太郎(あさぬま・しんたろう)
舞台、テレビ・映画、ラジオなどのシナリオライター、演出家。
俳優・声優としても活躍中。2007年、アミューズメントユニット「bpm」を結成。